(……ここは……?)
目が覚めた場所は外来品が並ぶ豪華な部屋だった。元は和室だったに違いないが、見事に改装されてある。ふすまこそ辛うじてそのままであったが、床は板の間でも畳でもなく毛足の長い赤い絨毯が広がっており、机も文机(ふづくえ)ではなくテーブルとかいう円形の机が置かれている。見たこともない生き物の剥製があちこちに飾られ、極めつけは天蓋付きの大きな寝所。たしか、ベッドとかいう……
「!」
そこまで考えた時、自分の置かれた状況を飲み込むことが出来た。床に放り出された格好で、両足は自由だったが両手は後ろ手に縛られており、軽く鬱血していた。着衣に乱れがなく懐にはきちんと白粉があったことから、自らの身にまだ何も起こっていないことはわかった。
あたりに人気はない。しかしいつ誰が来るか分からないため、気は抜けなかった。窓はひとつ。立ち上がって覗き込んだが二階であるため飛び降りることも出来ない。飛び降りたところで後ろ手に縛られているため大怪我は免れないだろう。
「くそっ!」
悪態をついたところで背後のふすまが開いた。襦袢を纏っただけの和泉屋はあの下卑た笑みをたたえていた。
「お目覚めのようですな。どうです?この部屋は。私の自慢の部屋なのだよ」
和洋折衷もまとまりがなければ悪趣味極まりない。そんな言葉を飲み込み、ただじっと和泉屋を睨みつけることしかできなかった。
「おや、お気に召しませんか。さすがかつては陰間の華だけあった方だ。お目が肥えていらっしゃる」
そう言いながら近づいてくる和泉屋から逃げるため、周囲に目を配る。しかし物が多く、空いている場所はあまりない。ベッドの端にふくらはぎが当たったところで、春哉の頬に冷や汗が伝った。
「そろそろ観念していただきましょう。……あなたがあの男を選んで陰間を辞めたとき、私がどれ程悲しかったか。あの日以来、あなたを抱いた夢をどれほど見てきたか。この想いの深さをあなたはご存知でない」
「あたりまえだ!お前の入れる隙など私の中には一切ない!!」
「それもそうだ。あなたの好みはあのような猛々しい若い男ですからね。このような老いぼれなど範疇にないでしょうな。あれからあの男に幾度、どんな風に抱かれた?どんな美しい声を上げて鳴いた?……どんな風にイッた?」
「っ!!貴様……」
「その姿をこれから見せていただきましょう」